2月29日におこなわれた「第7回 文化審議会著作権分科会法制度小委員会」にて協議され「AI と著作権に関する考え方について(素案)」が、文化庁のWEBサイトで文書も公開されました。(文化庁WEBサイト)
この文書は、AI技術、特に生成AIに関連する著作権法の適用範囲、それに伴う著作権侵害のリスク、及び法的枠組みについて深掘りしています。
主要な焦点は、AI開発段階での著作物の利用、生成AIによるコンテンツ生成時の著作権問題、及び海賊版による学習データの収集が著作権侵害をどのように助長するかに関する議論です。この文書は、技術革新とクリエイティブ産業の保護という二つの重要な側面の間でバランスをとることの必要性を強調しています。
内容紹介
はじめに
- AI技術の進展: AI技術の発展が加速し、特に生成AIが注目されている現状が説明されています。生成AIによるコンテンツ生成の能力が向上し、その利用が広がる中で、著作権侵害に関する懸念が高まっています。
- 法的枠組みの必要性: 生成AIに関連する著作権問題に対処するための法的枠組みの検討が急務であるとされています。この背景には、G7サミットや国内外での議論があり、生成AIと著作権の関係を明確にすることが求められています。
AI開発段階での著作権
- 学習データの収集と利用: AI開発において著作物を含むデータの大量収集が一般的であり、この過程で著作権の問題が生じ得ることが指摘されています。特に、学習データとしての著作物利用に対する法的制限とその適用範囲について詳細に論じられています。
- 技術的保護手段と権利侵害: 著作物の不正利用を防ぐための技術的保護手段の重要性と、その適用による著作権保護の強化が説明されています。また、海賊版との戦いが特に強調され、海賊版サイトからのデータ収集が著作権侵害を助長することに対する懸念が表明されています。
生成・利用段階での著作権
- 生成AIによるコンテンツ生成: 生成AIが既存の著作物に類似または依存したコンテンツを生成する際の著作権侵害のリスクについて分析されています。類似性と依拠性の両方が認められる場合、著作権侵害が成立する可能性があるとされています。
- 法的責任と対策: AI利用者や開発者が著作権侵害に対してどのような法的責任を負うか、また、著作権侵害を防止するための対策が議論されています。生成AIの利用における著作権侵害の課題への対処方法について、具体的なガイドラインが提示されています。
この文書は、AIと著作権の関係における現在の課題と、将来的な方向性を探る上で重要な基盤を提供しています。技術革新を促進しながらも、クリエイティブ産業の権利を保護するためのバランスを見つけることが、この議論の核心にあると言えます。
一通り読み終えて高村の感想
AI技術、特に生成AIの発展は、私たちの生活を豊かにし、ビジネスやクリエイティブな活動に革命をもたらす可能性を秘めています。
しかし、この技術の進歩は、著作権という法的枠組みとの間に新たな緊張関係を生み出しています。
著作権は、クリエイターが自らの創造物から利益を得ることを保証するためのものですが、生成AIが著作物を「学習」し、「生成」するプロセスでは、これまでの常識が通用しなくなる可能性があります。
この記事にあるように、AI開発段階での著作物の利用、生成AIによるコンテンツ生成時の著作権問題、そして海賊版による学習データの収集が、著作権侵害をどのように助長するかという議論は、私たちが注意深く考慮しなければならない点です。
特に、学習データとしての著作物利用に対する法的制限や、技術的保護手段の適用による著作権保護の強化は、クリエイティブ産業を保護する上で欠かせない要素と言えるでしょう。
さて、ここで重要なのは、技術革新とクリエイティブ産業の保護との間でバランスを取る必要があるということです。ピーター・ドラッカーは、「最も重要なことは目に見えない」と言いました。この言葉を借りれば、AIと著作権の問題においても、表面的な技術の進歩だけでなく、その背後にあるクリエイターの権利という「見えない」価値を大切にする必要があると言えます。
では、どのようにこのバランスを見つけるべきでしょうか。
まず、生成AIによるコンテンツ生成が著作権侵害のリスクを高める可能性があることを認識し、その使用には慎重なガイドラインが必要です。
具体的には、クリエイターの権利を尊重しつつ、新たな創造性を妨げないような枠組みを整備することが求められます。
また、技術的保護手段の開発と適用により、不正利用を防止することも重要です。
しかし、同時に、過度な制限がイノベーションを阻害することがないよう、柔軟性も保持する必要があります。
このように、AIと著作権の問題に取り組む上で、思い切って進めるべきことと、慎重に進めるべきことのバランスを見つけることが不可欠です。
それには、多様なステークホルダーが協力し、持続可能なクリエイティブ産業の未来を共に築いていく姿勢が求められます。
私たちが目指すべきは、技術革新を促進しつつも、クリエイティブ産業の権利を保護することで、全ての人が豊かな文化的生活を享受できる社会ではないかと感じました。
