数字が減っても、救えなかった命がある──そこを直視すべきです。

記事の説明
厚生労働省が公表した2025年度版「自殺対策白書」によると、2024年に国内で自殺した人の数は2万320人と、前年より1517人減少し、1978年の統計開始以来で2番目に少ない水準となりました。
一方で、若者世代の自殺は依然として深刻な状況にあり、特に15歳から29歳の自殺者数は3000人を超え、高止まりが続いています。
小学生から高校生までの自殺者数は529人と過去最多。年代別では、20代の自殺者は男性が1546人、女性が919人で男性が多い一方、15歳から19歳では女性の自殺者が男性を上回る結果となりました。若年女性では「服毒(医薬品)」による自殺の割合が高く、身体的負担が少ない方法を選ぶ傾向がみられています。
また、自殺の背景には「病気の悩み(うつ病)」が最も多く挙げられ、特に無職の若者における自殺死亡率が高いことが分かりました。有職者の場合は「職場の人間関係」や「仕事上の問題」が多く、社会との関わり方に起因するストレスが影響しているとみられます。
さらに大学生では、男女とも21歳の自殺が最も多く、その主な理由として「進路に関する悩み」が挙げられました。卒業や就職を控えた時期に将来への不安や自己否定感が強まることが背景にあると考えられます。
厚労省は、電話やSNSを通じた相談窓口の利用を呼びかけており、
「こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)」や「いのちの電話」などの活用を勧めています。
高村の考え
若者の自殺が減らないという現実に、深い危機感を覚えます。
統計上では全体の自殺者数が減少している一方で、15歳から29歳の層が高止まりしているというが特に心配ですね…。
「進路の悩み」によって命を絶ってしまう若者がいるという現実は、非常に重い問題と思います。
進路とは、将来の自分を描く行為であり、その過程で迷いや不安が生じるのは当然のこと。
それを誰にも相談できず、孤立したまま思い詰めてしまう構造が今の社会には存在しているのでしょう。
教育現場や家庭で「頑張れ」「諦めるな」と励ますことは多いものの、「休んでもいい」「別の道を考えよう」と言ってくれる存在がまだまだ少ないのではないでしょうか。
特に真面目で責任感の強い若者ほど、自分を追い詰めてしまう傾向があります。
また、SNSやオンラインの情報空間が、彼らの悩みを助長してしまうケースも見逃せません。
周囲と比較し、自分の立ち位置に劣等感を抱く。
そんな“見えない競争社会”の中で心をすり減らす若者たちに、私たち大人がどう寄り添えるかが問われています。
私は、行政が単に「相談窓口を設ける」だけでなく、学校や地域、職場といった日常の接点の中で「誰かに話せる空気」をどう作るかが重要だと考えます。
吹田市でも、教育委員会や学校現場とSSWやほか福祉団体等が連携し、若者のメンタル支援や居場所づくりを強化していますが、まだまだ足りません。行政・家庭・民間が連携し、困ったときに自然と声をかけられる社会をつくることが、何よりの自殺対策だと思います。
「命を守る」という言葉は重いですが、実際には「心を守る」ことの積み重ねが命を支えます。
どんな悩みも一人で抱え込まず、周囲が寄り添える環境を社会全体で整えていくことが、今の日本に最も必要なことではないでしょうか。