インバウンド黒字を相殺するほどの『デジタル赤字』、それでも私たちはなぜ海外サービスを使い続けるのか。
記事の説明
日本の「デジタル赤字」が近年深刻化しており、2024年度には6兆7722億円に達しました。これは、外国人旅行客による「インバウンド黒字」6兆6864億円を上回る規模で、文字通り日本が稼いだ分を相殺してしまうような勢いです。
この「デジタル赤字」とは、国際収支においてデジタル関連サービスの支出が収入を上回る状態を指します。特にNetflix、Amazon Prime Video、YouTube、Instagram、TikTokなどの動画配信やSNSサービス、クラウド利用料、オンラインゲーム、そして生成AIといった海外企業のサービスへの支払いがその主因です。
三菱総合研究所のレポートは、利便性や生産性の向上、安全性の確保といった点で一定のプラス面もあると評価していますが、マイナス面では富の流出、国内の技術投資の減少、海外企業への依存といったリスクを指摘します。
一方、みずほ銀行の見解では、この赤字は「原油の輸入」のような不可避のコストとして捉えるべきであり、楽観視できないとしています。
さらに経済産業省は、2035年には約28兆円に拡大する可能性を警告しており、「デジタル敗戦」という強い言葉まで用いて、日本の構造的な弱さに警鐘を鳴らしています。
高村の考え
私は個人的に海外のデジタルサービスに課金することを積極的に行っており、その利便性や品質の高さを実感しています。NetflixやAmazon、YouTubeなどは日本国内の同種サービスと比べても圧倒的に完成度が高く、日常生活や業務効率に欠かせない存在です。この「デジタル赤字」を問題視する声があるのは理解できますが、私はある意味で「仕方がない」と受け止めています。
日本から海外のデジタルサービスへ支払うお金は、一見すると「富の流出」に映りますが、実は個人・企業が未来の成長力を買い取る“先行投資”だと考えられます。
なぜなら、Netflix や生成 AI への課金で得るのは単なる娯楽や便利さにとどまらず、最先端の UX に日常的に触れることで磨かれるデジタルリテラシー、クラウドや SaaS によって短縮される業務時間、そしてそれらが生み出す余剰リソースを使って新規事業や副業をスピーディーに立ち上げられる環境そのものだからです。
ここで得られるのは、帳簿に載りにくい“無形資産”――時間、技能、越境ネットワーク、世界市場へのアクセス権――であり、これらは将来キャッシュフローを増やすレバレッジとして働きます。
もちろん海外企業への依存や技術主権の喪失といったリスクは存在しますが、それはマルチクラウド化やオープン標準の採用、さらには海外プラットフォーム上で日本発のコンテンツを販売して収支を逆流入させるなど、リスクヘッジを組み込んだ運用設計で十分に管理可能だと思います。
要は「払って終わり」ではなく「払った額以上を取り返す仕組み」を自らの行動計画に組み込むこと――これが、デジタル赤字という数字の向こう側にある“成長の呼び水”を最大化する鍵であり、海外サービスへの課金を堂々と“投資”と呼べる理由なのです。
とはいえ、このまま無策で「デジタル赤字」を拡大させるのではなく、民間と行政が連携し、国内のデジタル自立性を高める努力は不可欠ですね。
例えば、スタートアップ支援、大学や研究機関との連携、IT人材の育成、そして政府調達における国産技術の優先導入など、多面的な戦略が求められるのだと思います。
