「値下げ」から「値上げ」へ。選挙公約はどこへ?
住民の失望を招いた真鶴町の水道料金問題について触れたいと思います。

記事の説明
神奈川県真鶴町では、水道料金の高さが大きな問題となっています。町長選で「水道代の値下げ」を公約に掲げて当選した小林伸行町長ですが、当選から約1年後、「値上げせざるを得ない」との立場を表明し、町民の間で戸惑いが広がっています。
真鶴町は水資源が乏しく、隣接自治体から生活用水を購入しているため、もともと水道料金が高い自治体です。加えて、水道管の老朽化による漏水が頻発しており、その修繕費用が財政を圧迫している状況です。町の水道管の耐震化率はわずか2%にとどまり、近隣自治体の70%以上と比べても大幅に遅れています。
小林町長は、当初の公約通り水道の基本料金は引き下げる方針ですが、従量料金を引き上げることで全体の水道料金を平均2割値上げする提案を行いました。この改定により、7割以上の住民が実質的な値上げの影響を受ける見込みです。
特に水の使用量が多い飲食店や子育て世帯からは、「20%の値上げは大きすぎる」との不満の声が上がっています。町の上下水道課も、老朽化した水道管の更新が急務であることを認めており、値上げの必要性を訴えています。
しかし、町長は「議論が熟していない」として、水道料金改定案の議会提出を延期しました。値上げの必要性は認めつつも、住民の理解を得るための調整を続ける姿勢を示しています。
高村の考え
選挙公約が現実と合わなくなることは、政治の世界では珍しくありませんが、今回の真鶴町のケースは、町長自ら「見通しが甘かった」と認めるほど、当初の公約と現状のギャップが大きいものです。選挙で「水道料金を下げる」と訴えた以上、住民が「話が違う」と感じるのは当然のことでしょう。
もちろん、老朽化した水道インフラの維持管理にはコストがかかるため、値上げが必要になるのも理解できます。ただ、問題は「やれるべき改革をやった上での値上げか?」という点です。自治体の財政状況やインフラ整備の現状を踏まえれば、単なる値上げではなく、以下のような選択肢も検討すべきではないかと思います。
1. 広域水道の見直し
真鶴町は単独で水を購入しているため、コストが高止まりしやすい構造になっています。他の自治体と水道事業を統合するなどして、広域的なコスト削減を図る方法も考えられます。
2. 行政・議会の改革
水道料金の値上げが必要なほど財政が厳しいのであれば、まずは行政コストの見直しが必要です。町役場の経費削減や、議会運営費の見直しなど、削減できる支出はないのか再点検すべきです。
3. 公会計の徹底した透明化
町民が納得するためには、値上げの必要性を分かりやすく説明することが不可欠です。水道事業の収支を詳細に公表し、どのような費用がかかっているのか、どのように改善できるのかを具体的に示すことで、理解を得やすくなるでしょう。
4. 民間との連携による効率化
水道事業の維持管理は、必ずしも自治体単独で行う必要はありません。民間事業者と連携し、維持管理の効率化を図ることで、コストを抑えながら水道サービスの安定供給を目指すことも考えられます。
住民に負担を求める以上、行政側も最大限の努力を示さなければなりません。「見通しが甘かった」で済まされる話ではなく、公約を掲げた以上、実現のためにできる限りの方策を講じる責任があります。まずは「値上げありき」ではなく、「値上げせずにやれることはないのか」を徹底的に検証するべきでしょう。
町民の信頼を取り戻すためにも、小林町長には、今後より具体的な改革案と、その実行プロセスを明確に示さなくちゃいけないだろうと思います。