まずは記事をわかりやすく説明
ふるさと納税で財源の流出に悩んでいる政令市や特別区が、寄付獲得に力を入れ始めています。
この背景には、税収の減少と寄付獲得の差で生じる「赤字」が4年間で1.8倍に拡大したことがあります。
地方との格差是正という制度の趣旨を踏まえ、これまで返礼品競争から距離を置いてきた都市部が、耐えかねて反転攻勢をかけ始めたのです。
東京都新宿区の例では、高級ホテルの宿泊券や商業施設の共通食事券、老舗店の抹茶アイスなど、多彩な返礼品が提供されています。
同区は2008年度の制度開始以降、返礼品を提供してこなかったが、2023年10月から提供を始めました。
ふるさと納税の利用が増加することで税収が減少し、財源確保に向けた対策が必要となったためです。
ふるさと納税は、住民が居住地以外の自治体に寄付をすると、寄付額から2000円を引いた額が住民税などから控除されます。
そのため、利用の増加は居住地の自治体の税収減に直結します。
新宿区のふるさと納税による住民税の減少額は、2019年度の21億円から、2023年度は38億円に拡大しています。
一方、区への寄付は返礼品を提供していなかったことで、年間数百万~1億円程度と、税収減と集めた寄付額の差で「赤字」が生じています。
国は税収減の75%を地方交付税で補填していますが、税収が潤沢な理由で地方交付税を受けていない自治体は対象外です。
新宿区もこれに該当しており、多額の税流出が穴埋めされないことが問題となっています。
関西で税収減が最大の大阪市も、過度な競争を避ける目的で独自に定めていた返礼品の調達額の自主規制を撤廃しました。
大阪市の「赤字」は2022年度に144億円となり、少しでも税収減を食い止めるための対策が求められています。
厳しい財政状況が続く京都市は、一足早く積極姿勢に転じました。
2020年度にふるさと納税の専門チームを新設し、返礼品の充実を図っています。
2022年度には年21億円の「黒字」を達成しており、今の制度が続く限り、攻めの姿勢を維持していくとしています。
一部の自治体に寄付が集中している現状も問題視されています。
2022年度は参加する自治体のうち、上位100自治体が寄付総額の約46%を占めています。
桃山学院大学の吉弘憲介教授は、「都市部の本格参入は、税を奪い合う制度のゆがみが引き起こした現象だ」と指摘し、制度の改善を提案しています。
高村の考え
ふるさと納税の制度は、地方と都市部との格差を是正するために導入されたものですが、現在の状況を見ると、その目的が十分に達成されていないどころかひずみを生んでいるように感じます。
特に、都市部の自治体が大きな財源流出に苦しんでいる現状は見過ごせませんし、吹田市においても同様です。
例えば、新宿区や大阪市が述べているように、税収が大幅に減少し、その補填がなされない事態は深刻です。
これに対して、返礼品の提供を始めたり、調達額の規制を撤廃したりするなどの対応策を講じるのは理解できますが、これは根本的な解決策ではありません。
ふるさと納税の制度自体の見直しが必要です。
寄付受け入れ上限の設定や、地方交付税の適用範囲の拡大など、制度の構造的な改善が求められます。
特に、財政力の弱い自治体が更に弱体化しないよう、国がしっかりとサポートする体制を整えるべきです。
また、一部の自治体に寄付が集中する現象も問題です。
これは、地域の魅力や返礼品の魅力だけでなく、制度の設計にも問題があると考えます。 寄付が広く分散されるような仕組みを導入し、地域間の公平性を保つことが重要です。
このような課題に対して、行政と民間が協力し合い、持続可能な制度運営を目指すことが求められます。
ふるさと納税が、本来の目的である地域間格差の是正に寄与するために、今こそ制度の再評価と改革が必要だと感じます。