吹田市は、職員が市民から社会通念上相当な範囲を超えた言動を受けることを防ぐための条例が上程されました。
これは、昨今の「カスタマーハラスメント(カスハラ)」問題を背景に、公務員が安全で健全な環境で職務を遂行できるようにするための取り組みです。
条例制定の背景
近年、民間企業だけでなく、自治体職員も市民からの不適切な要求や暴言、威圧的な態度にさらされるケースが増えています。吹田市が令和6年(2024年)6月に実施した職員アンケートでは、「過去3年間にカスタマーハラスメントを受けたことがある」と回答した職員が41.7%にのぼりました。
すでに吹田市は令和5年(2023年)9月に「吹田市カスタマーハラスメントに対する基本方針」を策定し、啓発活動を行っていますが、それだけでは不十分だと判断し、より強い対策を打ち出すため条例の制定を進めています。
条例の主な内容
今回提案されている「吹田市社会通念上相当な範囲を超えた言動による職員の被害の防止に関する条例」では、以下の点が定められています。
1. 目的
職員が安心して働ける環境を確保し、市民も適切に行政サービスを利用できるようにすることで、公正な市政運営を維持することを目的としています。
2. 「相当な範囲を超えた言動」の定義
条例では、以下のような行為を「社会通念上相当な範囲を超えた言動」と定義しています。
- 内容が不適切なもの
- 行政サービスの範囲を著しく超えた要求
- 市の業務とは無関係な要求
- 物理的に対応不可能な要求
- 手段や態様が問題となるもの
- 暴力行為
- 暴言や脅迫、土下座の強要
- 威圧的な態度
- 何度も繰り返し執拗に要求する行為
- 長時間の居座り。
3. 市の責務
吹田市は、職員がこのような行為の被害を受けないよう、適切な相談体制の整備や防止対策を講じる責任を負います。
4. 受託事業者への支援
市の業務を委託されている民間企業の従業員に対しても、市は情報提供などの支援を行うよう努めることが求められています。
施行時期
もしこの条例が可決されれば、令和7年(2025年)4月1日から施行される予定です。
今後の動向
この条例が可決されると、職員に対する不適切な言動の抑制が期待されます。また、市民に対しても、適切なコミュニケーションを求める意識改革が進む可能性があります。カスハラ問題は、自治体だけでなく民間企業でも大きな課題となっており、今後も全国的な議論が続くことでしょう。