たった一つの対応ミスが、行政全体への信頼を失わせる、そんな事例ではないでしょうか。

記事の説明
島根県邑南町で、町営団地の住民から寄せられた「水道から濁った水が出ている」という相談を、町職員が1年以上にわたって放置していたことが発覚しました。問題となったのは係長級の職員で、町はこの職員を停職2か月の懲戒処分としました。
町によると、この職員は2024年3月ごろ以降、複数の住民から同様の相談を繰り返し受けていたにもかかわらず、上司や関係部署への報告を怠っていました。それどころか、正式な決裁を経ずに「修繕にかなりの費用がかかるので、転居をされるようならご相談を」と書かれた文書を住民のポストに投函。問題の解決どころか、責任を回避するような対応をしていたことが分かりました。
さらに、2021年11月には別の職員が濁り水の原因となる加圧ポンプの故障を発見していたにも関わらず、上司への報告を行わず、こちらも約2年間放置していたことが判明。この職員も減給処分を受けています。
町は、被害が町営団地という限られた範囲であったことを理由に、10月1日の公表をホームページ上のみで行い、報道発表は控えたとしています。しかし、住民の生活インフラに関わる問題でありながら、1年以上も適切な対応がなされなかったことに、町民から批判の声が上がっています。
高村の考え
生活に欠かせない「水道」のトラブルを、1年以上も放置していたというのは、あまりにも信じがたい対応です。
濁った水が出るということは、日常生活のあらゆる場面に支障をきたす深刻な問題であり、住民にとっては命や健康に関わるレベルの不安を抱える状況だったはずです。
それを放置し、「転居するなら相談受ける」などという文書を投函したというのは、まさに無責任極まりないと言わざるを得ません。
このような事態を生む背景には、単なる個人の話だけではなく、職場全体の組織文化や風通しの悪さがあるのではないかと感じます。
上司への報告がしづらい、あるいは報告しても取り合ってもらえないような雰囲気がある職場では、問題が放置され、現場での独断対応が起こりやすくなります。
まさに今回のケースはその典型のように見えます。
本来、行政の使命は「住民の安心と信頼を守ること」です。
水道や電気、道路などのインフラ整備は、目立たないながらも地域社会の根幹を支える仕事です。その仕事において、住民の声を軽視するような姿勢が根づいてしまえば、行政への信頼は一気に崩れます。
吹田市でもそうですが、行政職員一人ひとりが「自分の仕事が市民生活に直結している」という意識を持つことが非常に重要です。
そして、ミスやトラブルが起きたときには、早期に報告・共有し、組織として対応できる風通しの良い環境をつくることが不可欠です。
今回のような事案は、単なる地方の一件として片付けるべきではありませんね。
全国の自治体が教訓として受け止め、内部統制の強化と意識改革に取り組む必要があります。
住民にとっての「安心」は、制度や予算よりも、職員一人ひとりの誠実さと責任感の上に成り立つのです。