本日、武蔵野市の環境啓発拠点としてリノベーションされた「むさしのエコ re ゾート(旧武蔵野クリーンセンター)」およびその裏にある最新鋭のゴミ処理施設「武蔵野クリーンセンター」を視察してきました。
武蔵野市では、旧クリーンセンターを大胆にリノベーションし、「むさしのエコ re ゾート」として生まれ変わらせ、市民の環境意識向上と行動変容を促す場として活用しています。
同時に、背後にある最新鋭の「武蔵野クリーンセンター」は、見せる化・美しいデザイン・安全性を兼ね備えた、まさに“都市に溶け込むごみ処理施設”。
本視察では、環境啓発とインフラの融合、そして市民との共創がいかに機能しているかを、実際の施設見学と実績データを通じて深く学びました。
以下では、両施設の背景・コンセプト、具体的な機能・運営、利用実績など、自分の備忘録としても整理しておきたいと思います。
1. むさしのエコ re ゾート 概要と成立経緯
- 開設経緯
- 1958年から三鷹市「ふじみ処理場」との共同処理を行っていたが、1971年に市内処理(自区内処理)を求める声が高まり、新たなクリーンセンター建設が決定。
- 旧施設廃止後、低炭素社会づくりを先導する市民参加型拠点としてリノベーションし、2021年4月に「むさしのエコ re ゾート」として再スタート。
- 運営体制(令和7年7月時点)
- 常勤職員:3名
- 会計年度任用職員:6名(パートナー3名+アシスタント3名)
- 令和7年度予算:
- 施設運営費:35,012千円
- 啓発事業費:23,075千円
2. 基礎コンセプトと機能
基本理念(Basic idea)
- 多様な環境への気づき
ごみ・資源・エネルギー・緑・生物多様性など、幅広い環境要素への理解 - 市民参加と提案
多世代の市民が主体的にプログラム企画・運営 - 主体間連携
市民団体、事業者、行政の強み・ノウハウを共有 - 進化しながら磨く
時代やニーズ変化に対応し、新手法を継続的に導入 - 歴史の継承と連携
旧クリーンセンターの成果・想いを次世代へ継承
主な機能(Function)
- 知る(Know)
科学的知見や社会動向を体系的に発信 - 学ぶ・学び合う(Learn)
体感型展示やワークショップで環境課題を探求 - はぐくむ(Nurture)
子どもから大人まで気軽に参加できる場の提供 - つなぐ(Connect)
世代・分野を超えた交流機会の創出 - 支える(Support)
市民活動の課題解決をアドバイス・支援
3. 施設構成とプログラム
| エリア | 主な内容 |
|---|---|
| アーカイブ・事務室 | 環境情報のストック・フリーWi-Fi・相談対応 |
| フリースペース | 高天井の展示空間、DIYイベント・ワークショップ |
| ものづくり工房 | 廃材を活用した創作スペース |
| ホール・カフェ | 講座・勉強会、飲食しながらの交流 |
| サポータールーム | 市民サポーター向け鍵付ロッカー・打合せ室 |
| スタディルーム | 20名程度での講座・勉強会 |
- イベント・講座(令和7年1月末時点)
- むさしの環境フェスタ(11/17):出展27団体、来場5,457人
- エコ・チャレンジ(3/8):学校呈示発表+講演会
- 環境の学校(10~2月/全8回):中学生以上対象、144名
- Youthプロジェクト(9月+10~3月計3回):23団体79人、企画実践プログラム14人
- エコ re ゾート ワークショップ:年間94回、小学生~3年生向けに集中型実施
4. 利用実績とモニタリング
- 来館者数
- 令和6年度:99,517人(R5年度:92,416人)
- 学校見学
- 小中学校10校(市内8校含む)、児童生徒991人
- ワークショップ参加者アンケート
- 満足度:「大変満足」61%+「満足」35%=96%
- 意欲向上:74%が「取り組みたいと思った」、19%が「既に取り組んでいる」
- 居住地域・来館頻度
- 市内全域からバランス良く来館、月1~3回程度が44%
5. 市民団体支援&事例紹介
- 支援メニュー
- 場所貸出し、広報協力(市報・SNS・メルマガ)、補助金申請サポート
- 事例
- “水の学校サポーターズ”による井の頭恩賜公園ツアー
- NPO「雨水まちづくりサポート」の「雨にわNbSプロジェクト」
- 高校生・大学生主体の「朝活(MAKE Clean & Team)」:清掃+コーヒーブレイク
6. 武蔵野クリーンセンター概要・コンセプト
- 施設概要
- 敷地17,000㎡/建築面積7,779㎡(地下2F・地上2F)
- 焼却能力:59t/日×2炉、ガスコージェネ:1,500kW
- 蒸気タービン発電(最大2,650kW相当)、排ガス自主規制
- コンセプト
- 安全・安心な施設づくり
- 全国トップレベルの排ガス自主規制値以下で運転
- 焼却熱を活用した発電システムで約20%の効率化
- 災害に強い設計
- 法定耐震基準の1.25倍
- ガスコージェネにより災害時もエネルギー供給
- 景観デザイン
- 街並みに調和したテラコッタルーバー外装と壁面緑化
- 開かれた施設
- 見学通路(2階フロア一周)+大開口のガラス窓
- 屋上に太陽光パネル・菜園・緑化ゾーンを整備
- 安全・安心な施設づくり
最後に
吹田市においても、環境啓発の充実もそうですが、既存施設のリノベーションでハード面のエコを実現している部分についても参考にできる事があるかと思います。
ただひとつだけ、総工事費が5億9,000万円かかっており、大規模な工事費を回収・正当化するには、年間来館者数(今年は12万人以上の予測)やプログラム参加者数だけでなく、長期的な市民行動変容やCO₂削減効果などの定量的モニタリングが不可欠なんだと思います。
今回の視察に際し、武蔵野市の皆さまには大変丁寧かつ実践的なご対応をいただき、心より感謝申し上げます。
市民との対話を重ねながら築かれた「むさしのエコ re ゾート」や、先進的なクリーンセンターの在り方に、私自身大きな学びと刺激を受けました。
ご案内いただいた職員の皆さま、運営に関わる全ての方々に、改めて御礼申し上げます。

























