ちょっと古い調査結果ではありますが、2023年の記事を引用しながら、ひきこもり146万人という現実、その背景について考えてみたいと思います。
記事の説明
2023年3月、内閣府が公表した調査結果によると、日本では15歳から64歳の約146万人が「ひきこもり」と定義される状態にあることが明らかになりました。この数値は、日本の生産年齢人口の約2%に相当します。調査は2022年11月に実施され、対象となった3万人のうち約1万3,769人が回答しました。その結果、「趣味の用事のときだけ外出する」「自室からほとんど出ない」など、外出をほとんどしない状態が6か月以上続いている人の推計が算出されました。
調査によると、ひきこもりの理由として、回答者の約20%が「新型コロナウイルスの流行」を挙げており、コロナ禍による社会的環境の変化がひきこもり状態を悪化させた可能性が指摘されています。これにより、もともと孤立していた人々がさらに社会的つながりを失い、精神的な不安定さを抱えるケースが増加したことが示唆されています。
特に注目すべきは、年齢層や性別によるひきこもりの特徴の変化です。若年層である15歳から39歳のひきこもり率は、前回調査の1.57%から2.05%へと増加。一方、中高年層である40歳から64歳でも、同様に1.45%から2.02%へと増えています。また、これまで男性の問題として捉えられがちだったひきこもりですが、今回は女性の割合が顕著に増加していることがわかりました。40歳から64歳の中高年層では、女性の割合が52.3%と初めて男性を上回り、15歳から39歳でも45.1%に達しています。この結果は、これまでの「ひきこもり=男性」という固定観念を覆すものです。
一方で、ひきこもり状態にある人々は、家族以外の他者と接触する機会が少ない傾向にあります。15歳から39歳の45.8%、40歳から69歳の49%が「家族以外の人と会話することがある」と回答しているものの、これらの数字は、ひきこもりではない人々と比較すると著しく低い水準です。さらに、「誰にも相談したくない」と答えた人が若年層で22.9%、中高年層で23.3%にのぼり、その理由として「相談しても解決できない」と感じている人が半数以上を占めています。これは、現在の相談体制や支援方法に課題があることを物語っています。
支援団体「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」の理事は、これらの結果について、「従来の解決型支援には限界がある」と指摘し、ひきこもりの多様性に対応した新たな支援方法の必要性を訴えています。特に、社会に適応させることを目的とする支援ではなく、個々人の状況に寄り添い、信頼関係を構築しながら社会との接点を探る支援が求められています。また、インターネット空間を活用した「新しい居場所づくり」も重要な課題とされています。
この調査の結果からは、ひきこもりが特定の性別や年齢層に限定されない普遍的な社会問題であることが浮き彫りになっています。また、ひきこもり状態にある人々が、自身の困難を「相談しても解決できない」と諦めていることは、社会全体としての支援のあり方を問い直す契機となるでしょう。ひきこもりがもはや「特別な問題」ではなく、「誰もが直面する可能性がある問題」として捉える視点が求められています。
高村の考え
ひきこもり問題は、現代日本が抱える複雑で深刻な社会課題を象徴しています。
その背景には、個々人の性格や家庭環境だけでなく、社会全体の構造や文化的な価値観が影響していることは間違いありません。
この問題に取り組むには、個別の支援に加え、社会全体の仕組みを見直すことが求められます。
特に注目すべき点は、今回の調査結果が「不登校問題」と密接に関係している可能性が高いと私は思うのです。
ひきこもり状態にある人々の多くは、家庭や学校といったリアルな居場所を「安心できる場」と感じていない一方で、SNSなどのネット空間を居場所としているという結果が示されています。
この傾向は、不登校の子どもたちにも当てはまる部分があるのではないでしょうか。
不登校の子どもたちが学校という場に馴染めず、外出を控えるようになることが、結果的に長期的なひきこもりにつながるケースは少なくないと思います。
また、不登校が長引くことで「学びの場」だけでなく「人間関係の場」をも失う可能性があります。
このような孤立状態が続けば、社会とのつながりを持つことがますます難しくなるでしょう。
早期の介入や支援が必要ですが、現状の学校や教育機関が提供する支援体制にはまだ課題が多いと感じます。
さらに、ひきこもりが増える原因として、学校や社会が「個々の多様性」に対応しきれていない側面も見逃せません。画一的な価値観や、成績や競争を重視する仕組みの中で、周囲に馴染めない子どもたちが増えている現実があると感じています。
例えば、学校という集団生活に適応できなかった経験が、その後の社会生活でも「自分はどこにも居場所がない」と感じさせ、ひきこもりに至る可能性を高めているのではないでしょうか。
では、何ができるのか。
まず、不登校やひきこもりの段階で、子どもたちが「安心して過ごせる場所」を確保することが重要だと考えます。
それは、学校だけに限定されるべきではありません。
地域社会や、場合によってはオンラインのコミュニティが、子どもたちにとっての「新しい居場所」になり得ます。
現代のテクノロジーを活用して、学び直しや人間関係の構築を支援する仕組みを拡充させることだって可能かもしれません。
また、学校現場では、不登校が「問題」ではなく「選択肢の一つ」として認識されるような意識改革も必要だと思います。
不登校を経験した子どもたちが、自らのペースで学びや社会参加を取り戻せるように、多様な学び方やコミュニティの提供が欠かせないのではないでしょうか。
そのためには、地域や行政、民間が一体となり、教育と福祉の連携を強化する必要があると考えます。
不登校問題とひきこもり問題のつながりは、単なる教育や福祉の課題にとどまらず、社会全体が個々の多様性を認め、尊重する姿勢を育むための試金石だと思います。
この問題にどう向き合うかが、未来の社会のあり方を大きく左右するでしょう。
私たち一人ひとりが、「誰にでも居場所がある社会」を目指し、行動を起こしていくことが求められていると強く感じます。