教職員の働き方改革と生成AIについて
近年、教職員の働き方改革の必要性が、ますます高まっています。
教育現場では、子どもたちの学びを支えるためのリソースが、慢性的に不足しており、授業や授業準備の負担が重い一方で、事務作業や保護者対応など、多岐にわたる業務に、多くの時間を割かざるを得ない状況です。
働き方改革なくして新たな挑戦の余地がない中、教育DXの一環として生成AIの利活用が、有効な手段として以前より注目されています。
本年2月議会でも、校務における生成AIの使用について触れましたが、当時は実践事例が確認されておらず、今後の課題として研究することを示されました。
現在までに、生成AIの教育現場への導入や活用についての進展が、どのように図られているのか、あまり時間の経過はありませんが、ここで今一度確認させて頂きます。
教職員の働き方改革の推進において、生成AIを活用することのメリット・デメリットについて、教育委員会としての見解を伺います。
メリットについては、特にどの分野や業務への導入が有効だとお考えなのか、具体例を挙げてお示し願います。
もしも、有効ではないと判断されている場合は、その理由についてもお聞かせ願います。
教育監
教職員が生成AIを活用することで、保護者配付文書の作成や様々なデータの集約、行事の記録作成などに係る時間が大幅に短縮され、また、アンケート結果や、児童、生徒の成績等が迅速に分析できることで業務削減につながるなど、教職員の働き方改革の観点から効果が期待されます。
しかし、生成AI自体の性質やメリット、デメリットの理解が不十分なまま安易に導入することで、教師の専門性を発揮すべき活動をAIに委ねてしまう可能性があることや、生成AIに入力した個人情報が生成AIに学習されるリスク等、セキュリティーに関することが危惧されます。
2月議会以降、教育現場で生成AIの導入や活用に関して、何か進展がありましたか?
他市や国の取り組み動向を踏まえた、本市の対応や検討状況についてもお聞かせ願います。
教育監
年度、画像生成機能があるアプリケーションとAIアシスタント機能があるアプリケーションを導入いたしました。
来年1月には小・中学校の教職員を対象として、生成AIの基礎と導入したアプリケーションの活用に関する内容の情報教育研修を実施する予定でございます。
生成AIの利活用に関しましては、国からパイロット校での様々な実践事例が示されている一方で、引き続き、取組を踏まえた成果、課題の検証が必要との見解も示されております。
教職員の業務改善につながる側面と、児童、生徒の学びに資する側面の両面から情報収集に努め、引き続き研究を進めてまいります。
教職員の働き方改革とPTAについて
教職員の働き方改革が求められる中、学校運営に密接に関わるPTA活動についても、その在り方を見直す必要があるのではないでしょうか。
PTAは保護者と教職員が協力して、学校運営を支える団体ですが、働き方改革により教職員の業務負担を軽減する方向性と、PTA活動への関与が矛盾しないよう調整が必要と考えます。
こうした視点から、以下質問をさせていただきます。
PTAという組織の性質上、『T』は教職員を指しますが、働き方改革により、教職員の業務負担を軽減する一方で、PTA活動における教職員の関与をどのように考えていますか?
働き方改革とPTA活動の関係性について、教育委員会の見解を伺います。
教育監
吹田市、PTA協議会では、その設置目的として、教育環境の向上に努めるとともに、家庭教育の振興を図るとされており、各校の教育環境の充実に御尽力をいただいているものと認識しております。
一方で、教員の働き方改革の取組が進む中、同時に、PTA活動そのものについても、保護者や教員の負担軽減の観点から、規模の縮小や業務の改善を図られるなど、様々に工夫をしながら、子供たちの健全な育成に向けて、教員とともに取り組んでいただいているものと認識しております。
教職員のPTA活動への関与が、働き方改革の理念と矛盾しないようにするため、教育委員会が講じている対応策についてお聞かせください。
教育監
子供たちの教育環境の充実に向け、教職員が効果的にPTA活動と関わりながら、教員の負担軽減を図る方策として、例えば、本年度、モデル的に配置している学校副管理者が教頭に代わり、PTA活動の窓口を担うなどの取組を進めているところです。
本年8月に開催いたしました総合教育会議において、教員の働き方改革の方向性を示す教員の働き方改革グランドデザインについて議論し、本年度中に策定を予定しております。
この方向性を踏まえ、各校において、PTAとしての今後の活動の在り方について、引き続き整理が図られていくものと考えております。
PTAが学校運営や教育活動に密接に関わる現状を踏まえ、教育委員会としてPTA活動を適切に整理する必要性があるのかもしれません。
任意団体の性格を尊重しつつ、教育委員会が関わる事は、整合性・道理にかなうと考えるのは自然です。
たとえば、教職員が関与しない場合の活動支援や、PTA側の負担軽減について、具体的な指針を示すことや、活動の在り方について、働き方改革の観点から再定義するなど、時代に合わせた変革が必要ではないかと考えますが、教育委員会として考えがありましたら、お聞かせ願います。
教育監
PTA活動そのものについて、保護者及び教員の負担軽減につながる取組が進められる中、教育委員会といたしましては、教員の働き方改革の方向性に沿って学校を支援することで、PTA活動がより効果的、効率的なものとなるよう促してまいりたいと考えております。
STEAM(スティーム)教育について
2年前の私の議会質問において、プログラミング教育やSTEAM教育に関する研修の実施する事について、当時の教育監から回答がありました。
その後、教職員の研修状況や教育現場での実践が、どのように進展したのかを確認するとともに、今後の取り組みについて伺います。
教職員向けのSTEAM教育に関する研修は、これまでに実施されましたでしょうか?
実施された場合、その回数、内容、得られた成果について具体的にお教えください。
教育監
STEAM教育のみに特化した教職員研修は実施しておりませんが、STEAM教育で求められる教科横断的に必要とされる課題発見能力や創造性、問題解決能力を育成するための事業改善に資する研修を年間を通して実施しております。
研修後に実施している教職員アンケートでは、94%が当該研修に価値を感じていると肯定的な回答を示しており、今後、さらなる授業改善に向けた教職員の意識の向上が進んでいるものと認識しております。
本市においてSTEAM教育を推進していくためには、現在どのような課題があると認識しておりますでしょうか?
また、課題解決に向けた具体的な取り組みや計画があれば教えてください。
教育監
小中学校におけるSTEAM教育につきましては、各教科での学びを様々な情報を活用しながら、実社会における問題発見や解決に生かしていく教科横断的な学習であることから、各校の教育課程の見直しも含めた実効性のある学習計画の立案が課題となります。
また、具体的な取組といたしましては、児童・生徒自身が主体的に学習テーマや、探究方法等を設定する学習活動を行うことで、各教科等で身につけた見方、考え方を統合的に働かせて学習を展開する力の育成につながるものと認識しております。
STEAM教育を推進するうえで、企業や大学、研究機関など外部機関との連携が効果的であると考えます。
そういった連携の意義や可能性について、教育委員会として見解をお持ちでしたらお聞かせください。
教育監
児童、生徒が各教科等で身につけた資質能力を実社会で問題発見、解決に生かしていく上で、企業や地域や企業や大学等の連携は大切であり、効果的な取組につながるものと認識しております。
今後も、児童、生徒の発達段階や地域の実情等に応じて、外部機関等との連携を図りながら、STEAM教育の狙いも含めた現代的な諸課題に対応して、求められる資質・能力の育成に努めてまいります。
GIGAスクール構想における1人1台端末等について
これまで本市のGIGAスクール構想における1人1台端末は、中学生にはWindows端末を貸与しておりましたが、令和7年度からの更新は順次iPadにしていくと本議会で補正予算があがっております。
今回のiPad移行において、中学生への教育効果に関して、Windows端末よりも優れているという明確なエビデンスが提示されておらず、運用コスト削減といった“大人側の都合”だけが示されているように感じますが、本来、移行の真の目的は、生徒の学びの質の向上であるべきと考えます。
まずは確認ですが、GIGAスクール構想の導入段階の端末の選定で、小学生はiPad、中学生にはWindows端末の貸与が決定されたわけですが、この端末の選定について、具体的な理由をお教え願います。
教育監
GIGAスクール構想に基づき、小学校児童には低学年でも直感的な操作がしやすいiPad端末を、中学校生徒には一般社会において、使用頻度が高いキーボード及びタッチパッドを使っての操作を想定し、ウィンドウズ端末を配備いたしました。
今回の中学生向けの端末をWindows端末からiPadへ移行するにあたり、学びの質の向上に、どのような具体的な効果があると考えてのことでしょうか?
特にWindows端末と比較して、iPadの教育的な優位性を示すエビデンス等があればご提示ください。
教育監
学習用端末の更新に当たり、それぞれのOSについて情報を収集し、アドバイザーを含む検討会議において、インストールの可能な教育用アプリケーションの種類、起動の迅速性、バッテリーの容量、操作性、故障率等、様々な観点から比較検討を行った上で総合的に最適なOSについての判断をいたしました。
iPadにつきましては、生徒が考えたことをまとめたり表現したりする際に、直感的な操作による多様なアウトプットが可能であることから、生徒が自ら学び方を選択して主体的に学ぶ力の育成を目指した授業づくりに必要なツールとして選定しており、生徒も個別最適な学び、協働的な学びの実現に寄与するものと認識しております。
おっしゃっていただいたiPadの優位性の部分ですが、Windows端末に置き換えても同じことが言えると思うので、もっと具体例を挙げて欲しかった…。答弁としては残念。
iPad移行後の教育効果を検証する予定はありますか?
その際に使用する指標や方法について、具体的にお示しください。
教育監
学習用端末更新後は、教職員の活用指導力と、児童、生徒の情報活用能力の両側面から効果検証が必要であると認識しております。
指標につきましては、国が示す教職員のICT活用指導力チェックリストや児童、生徒の情報活用能力の育成の方針等に基づいて設定し、全国学力・学習状況調査等の既存の調査結果を参考に、経年比較しながら検証してまいります。
STEAM教育を推進する観点から、Windows端末はiPadに比べて、プログラミング言語の多様性やサードパーティ製機器への対応など、教育内容を拡張するための柔軟性に優れていると考えます。
特に、Windows端末は、幅広いデバイスやソフトウェアとの互換性があり、より包括的な学びの場を提供できる可能性があります。
しかし、iPadへの移行により、これらの利点が制限される懸念があるのではないでしょうか。
中学校におけるSTEAM教育を推進するのであれば、このようにiPadよりもWindows端末の方が適しているのではないかと考えます。
教育現場での選択肢を狭めないためにも、iPadへの一方的な移行は慎重に判断すべきと考えますが、教育委員会としてのお考えをお聞かせ願います。
教育監
学習用端末の更新につきましては、児童、生徒の個別最適な学び、協働的な学びを実現するための活用促進の観点から、アドバイザーを含む検討会議等での意見聴取を経て、OSを決定いたしました。
それぞれのOSに特徴があることは認識しておりますが、小学校低学年から中学生まで、児童、生徒が発達段階に応じて、文房具として日常的に活用できるものとしての更新を進めており、学習用端末を活用した探究的な学習や教科横断的な学習を進める中で、STEAM教育における効果的な活用についても研究を進めてまいります。
GIGAの端末は、教育カリキュラムやSTEAM教育の目標に適合した「実用的かつ効果的なツール」であるべきという事を前提に、STEAM教育の多様な分野で求められる柔軟な学習環境を提供するのであれば、Windows端末の方が優れているのではないかと思うところです。
GIGAスクール構想による1人1台端末の整備は、子どもたちの未来に対する投資であり、その重要性は疑う余地がありません。
「端末の使用で学力低下」を説く方もおられますが、テクノロジーの進化とともに測る物差しも変わらなくてはいけません。
つまり、過去の物差しで、今の子供たちの能力は正確に測れないということです。
時代に即した学びの成果を適切に評価する方法や、iPadとWindows端末の両方で端末使用による効果検証を吹田市として模索してほしいと思います。
さて、これまでの質疑を通して私が申し上げたいのは、今回の移行の真の目的が「子どもの学びの質の向上」であるべきだということです。
iPadでしか実現できない学習があるからiPadに移行していく!といった言葉が聞きたかったのですが、特にそういったお言葉が無かったのは、残念でした。
ご答弁にありました「STEAM教育における効果的な活用について研究を進める」というお言葉を信じて、子どもたちの学びをより充実したものにして頂くようにお願いしておきます。
最後に
先日、市内の遊歩道において、自転車の進入防止柵が、逆に電動車いすや大型ベビーカーの通行を妨げるという課題を抱えていた個所があり、道路室さんと協議を進めてきました。
当初は難しいという判断でしたが、最終的には柵を更新して解決いたしました。
電動車いすだけではなく、小規模保育園のお散歩のワゴンも通行ができるようになったと、通行者や地域の方々から、感謝の声が寄せられました。
できない理由を並べるのではなくて、どうすればこの難題を解決できるのか本気で考え、行動に起こしてくれたことが、このような結果に至ったのだと思います。
ご担当所管の方々には感謝申し上げます。
今後も、吹田市の職員さんにおいては、できない理由を並べるのではない、改善や改革などに積極的な姿勢で取り組む組織であることに期待しております。